クリニックのホームページを自作・内製する方法と注意点
ホームページの更新を待つ間に、告知の時期は過ぎていく
クリニックのホームページを自作・内製する動きが広がっています 背景にあるのは、インフルエンザ予防接種の受付開始、年末年始の休診案内、新しい検査の開始など、載せたい情報にはたいてい「載せるべき日」がある、という事情です
ところが制作会社に修正を依頼すると、返信までに数日、反映までにさらに数日かかることが珍しくありません これは制作会社の怠慢ではなく、多くの顧客を順番に抱える受託ビジネスの構造の問題です
新しい診療を始めるときは、この差がいっそうはっきり出ます 外注では、打ち合わせの日程調整、内容のヒアリング、初稿の確認、修正の往復と進み、公開までひと月近くかかることもあります 私たちの現場では、内製に切り替えてから、告知を決めたその日に下書きを作り、翌日には公開する、という流れが当たり前になりました
医療機関の情報は、正確さと同じくらい鮮度が大切です 診療時間の変更が反映されていないホームページは、患者さんを窓口で戸惑わせ、電話での問い合わせを増やします
内製化の本質は「直したい日に直せる」こと
ホームページの内製と聞くと、デザインをゼロから自作する話を想像するかもしれません 私たちが大切だと考えているのは、そこではなく更新の主導権です
直したい日に直せるようになると、変わるのはスピードだけではありません 「この表現で伝わるか」を試して、翌週に書き直す、という改善の回数そのものが増えます
- 休診や臨時診療の案内を、当日のうちに出せる
- 季節の告知を、始まる前の一番効果的な時期に載せられる
- 文言や写真を試しながら、少しずつ良くしていける
- 「誰かに頼む」心理的なハードルが消え、更新が習慣になる
外注そのものが悪いわけではありません デザインの骨格や保守は専門家に任せ、日々の更新部分だけを院内に取り戻す、という分担も現実的な選択です
クリニックのホームページのつくり方——内製の手順を順番に
ここからは、私たちが自分たちのサイトで実際に踏んでいる手順をそのまま書きます
「何から手を付けるか」が決まっていれば、つくり方は難しいものではありません
- 目的と導線を先に決める——見た人に何をしてほしいのか(予約・電話・場所の確認)を1つに絞ります デザインより先にここを決めないと、きれいなだけのページになります
- ページ構成を決める——トップ・診療案内・医師紹介・アクセス・よくある質問・お知らせ、が基本の骨格です 最初から全部そろえる必要はなく、トップとアクセスだけでも公開できます
- 制作の手段を選ぶ——作成ツールで自分で組むか、AIに下書きを作らせて手直しするか、更新部分だけ院内に取り戻すか いまの体制と時間で決めます
- 文章と画像を用意する——下書きはAIに任せ、事実の確認は必ず人が行います 診療時間・住所・担当医の情報は、ここでの間違いが一番の実害になります
- 医療広告ガイドラインの観点で見直す——次の節で詳しく書きますが、公開前のチェックを工程として組み込みます
- 公開して検索エンジンに登録する——Google Search Consoleにサイトを登録し、サイトマップを送信します 公開しただけでは検索に載るまで時間がかかります
- 更新の担当と頻度を決める——誰が・いつ・何を更新するかを決めて初めて、ホームページは「動く」ものになります お知らせが年単位で止まっているサイトは、この工程が抜けています
この7つのうち、外の会社に頼まないと難しいのは実はごく一部です
私たちのサイトも、この手順で院内とAIの組み合わせだけで動いています
AIで下書きから画像まで——Web制作という仕事が変わりつつある
内製の最大の壁だった「書く時間がない」「HTMLが分からない」は、AIの登場でかなり低くなりました
診療案内の文章の下書き、よくある質問の整理、告知文の作成、ページ構成の提案、そして掲載用の画像まで、AIに依頼すれば数分で最初の形が出てきます 院長が診療の合間にゼロから書くのと、出てきた下書きを手直しするのとでは、かかる時間も気力もまるで違います
少し引いて見ると、これはWeb制作という仕事そのものの変化です Web制作は長らく専門家の領域で、外注すれば大きな費用がかかってきた仕事でした 統計処理やプログラミングと同じように、「頭がいい」とされてきた領域の仕事ほどAIに置き換わっていく、というのがいま起きている変化の本質です 一方で、診察室での対話や手技のように、人にしかできない仕事は残ります だからこそ、置き換わっていく側の作業は道具に任せ、医療者は人にしかできない仕事に時間を使う、という配分に組み替える価値があります
ただし、AIは時に事実と違うことをもっともらしく書きます 下書きはAIに任せ、事実の確認と最終判断は人が行う、という役割分担を崩さないことが運用の前提です
私たちは、同一グループの医療法人が開設するクリニックを実証の場として、AIを使ったホームページの内製運用を実際の診療現場で続けています 告知の掲載が「思い立った日」にできる体制は、一度手にすると元の待ち時間には戻れなくなります
紹介ページを2〜3本作り、反応を数字で見て選ぶ
内製ならではのやり方として、私たちがすすめているのが「1本で決めない」ことです 外注では費用と往復の手間から紹介ページは1本作って終わりになりがちですが、内製とAIの組み合わせなら、同じ診療の紹介ページを切り口を変えて2〜3本作ることに大きな追加負担はありません
たとえば、症状の困りごとから入る構成、検査や受診の流れから入る構成、よくある質問から入る構成、と切り口を変えて公開し、閲覧数や予約への進み方を数字で見比べます 一定期間見て、反応の良かった1本を残して磨き込む、という選び方です 感覚や好みではなく数字で決めるので、院内での合意も取りやすくなります
この試行錯誤は、最初から完璧を目指さない、という考え方とも地続きです 1本目で要領をつかみ、2本目で切り口を変え、3本目で数字の見方が分かる、と段階を踏むうちに「これもできそうだ」の範囲が広がっていきます 数字を毎朝見る体制づくりは、予約データの自動集計の考え方と共通です
なお、切り口を変えると言っても、医療広告ガイドラインの枠の中での話です 構成の工夫と、誇大な表現に踏み出すことは、はっきり別物として扱います
内製でも医療広告ガイドラインは免除されない
ここが内製化のいちばんの注意点です 制作会社を通さないぶん、表現のチェックも院内で担うことになります
厚生労働省の医療広告ガイドラインは、自作のホームページにも同じように適用されます とくに次の3つは、AIが下書きを作る時代だからこそ意識しておきたいところです
| 避けるべき表現 | 考え方 |
|---|---|
| 誇大表現 | 「最新」「最先端」など根拠を示せない強調は使わない |
| 比較優良 | 「地域一番」「他院より優れた」といった比較をしない |
| 効果保証 | 「必ず治る」「絶対に改善する」といった断定をしない |
AIの下書きは流暢なぶん、こうした表現が自然に混ざり込むことがあります 「AIが書いたから大丈夫」ではなく、公開前に人がガイドラインの視点で確認する手順を運用に組み込みます チェックの具体的な進め方は医療広告ガイドラインとAI活用で詳しく扱っています
内製化は、ルールなしで始めると属人化という別の問題も生みます 私たちの現場では、次のような取り決めを置いています
- 更新できる人を2名以上にして、休みや退職で止まらないようにする
- 公開前に別の1名が目を通す、二重チェックを習慣にする
- いつ・誰が・何を変えたか、変更の記録を残す
- 写真や文章の元データの置き場所を決めておく
- ガイドライン上の判断に迷う表現は、公開せずいったん保留する
なお、2026年6月の診療報酬改定では、デジタル化について体制の評価から活用実績の評価へと軸足が移りました ホームページの内製もこうした流れの中にあり、デジタル化・AI導入に関する補助金には従業員300人以下の医療法人も対象になるものがあります 制度の全体像は医療機関で使える補助金の考え方で整理していますが、条件や時期は変わるため、検討の際は中小企業庁などの公募要領で最新の内容を確認してください
ホームページの内製は、成果が目に見えやすく、AI活用の入り口としても取り組みやすい領域です 何から始めるか迷う場合は、医療機関向けAI導入支援の考え方もあわせてご覧ください
よくある質問
- クリニックのホームページは専任の担当者がいなくても内製できますか
- 受付や事務のスタッフが日常業務の合間に更新している例は多くあります 大切なのは専任者を置くことよりも、更新手順を簡単にしておくことと、2名以上が触れる状態にしておくことです
- ホームページを内製したら今の制作会社との契約はやめるべきですか
- すぐに解約する必要はありません サーバー管理や大きなデザイン改修は外部に任せたまま、お知らせなど更新頻度の高い部分だけを院内で直せるようにする、段階的な移行が現実的です
- AIが作った文章をそのままホームページに載せてもいいですか
- そのまま公開することはおすすめしません AIは事実と違う内容を自然な文章で書くことがあるため、事実関係の確認と、医療広告ガイドラインの視点での見直しを人が行ってから公開する、という手順をセットにしてください


