医療広告ガイドラインとAI|内製時代の注意点
医療広告ガイドライン対応の結論は「最後に人が確認する体制」
医療広告ガイドラインへのAI時代の対応は、結論から言えばひとつに集約されます
AIが作った文章を、最後に人が確認してから公開する──この体制を院内に持つことが、規制対応の土台になるということです
確認する人が広告可能事項や限定解除の要件といったガイドラインの中身を理解していて初めて機能する、という前提つきです
ホームページの文章、コラム記事、SNSの投稿、院内掲示──AIを使えば、こうした発信物を院内で短時間に量産できるようになりました
私たちも、同一グループの医療法人が開設するクリニックを実証の場として、発信物の内製を実際の現場で運用しています
ただし、作るスピードが上がるほど、公開前の確認の重要性は増します
外注していた時代は制作会社が一次チェックを担っていましたが、内製ではその役割も院内に移ります
つまり内製とは、作る力と確認する力をセットで院内に持つことです
誰でも量産できる時代は、裏を返せば、規制を守れている院とそうでない院の差がこれまで以上にはっきり開く時代でもあります
本記事では、規制の基本的な考え方、AI生成文に紛れ込みやすい表現、公開前の院内チェックの型、という順に整理していきます
医療広告ガイドラインの基本的な考え方
細かな規定に入る前に、まず全体の考え方を押さえておくと判断に迷いにくくなります
医療広告の規制は、患者さんが誤った期待や不利益を持たないよう保護することを目的としています
一般論として、押さえておきたい柱は次のとおりです
- 広告できる事項は原則として限定されている(広告可能事項の限定)
- 誇大な広告や、事実に反する内容は認められない
- 他院より優れていると示す比較優良広告は認められない
- 患者さんの体験談は、治療の内容や効果に関するものは広告に使えない
- 治療前後の写真も、条件を満たさない掲載は制限される
これらは新しい規制ではなく、外注で作っていた時代から変わらないルールです
変わったのは、作り手が院内になり、公開までの関門が減ったという環境の方です
昨日書いた文章を今日公開できる内製のスピードは強みですが、同じ速さで問題のある表現も世に出てしまう、という両面を持っています
ホームページも、条件によっては広告として扱われる点に注意が必要です
「広告ではなく情報提供のつもりだった」は理由になりません
迷ったときは「この表現を読んだ患者さんが、過大な期待を持たないか」に立ち返ると、判断の軸がぶれにくくなります
この一文を院内の共通の物差しにしておくだけでも、公開前の会話がかみ合いやすくなります
AIは時に嘘をつく──生成文をそのまま公開するリスク
前提として知っておきたいのは、AIは時に嘘をつくという特性です
事実でないことをそれらしく書くこともあれば、できることを「できない」と答えることもあります
これはAIを使わない理由ではなく、特性を理解して作り込み、最後は人が確認するという分担で使う理由です
AIの文章は流暢なぶん危うさが見えにくく、一見整っているため、読み流すと問題のある表現に気づけません
医療機関の発信で特に紛れ込みやすいのは、次のような表現です
| 紛れ込みやすい表現 | 何が問題か |
|---|---|
| 「必ず改善します」などの断定 | 効果の保証にあたり、誇大広告と判断され得る |
| 「地域で一番」「他院より安心」 | 比較優良広告にあたる恐れがある |
| 出典の分からない統計や数字 | 事実でない記載が事実のように書かれることがある |
| 実在しない設備や資格への言及 | AIが文脈から「ありそうなこと」を作ってしまう |
AIは、事実かどうかではなく「文章として自然かどうか」で言葉を選びます
だからこそ、生成された文章をそのまま公開する運用は避けるべきです
効果の断定や事実でない記載は、書いた人に悪意がなくても紛れ込みます
確認を仕組みにしないままAI活用を広げてつまずく流れは、AI導入の失敗パターンの記事で書いた型のひとつでもあります
もうひとつ注意したいのは、AIに「魅力的に書いて」と指示するほど、表現が強くなりやすいことです
集患を意識した指示は、そのまま誇大表現への近道にもなります
指示の段階から「効果の断定をしない」「比較をしない」と条件を添えておくと、直す手間が減ります
私たちが自社の発信物を作るときも、指示文の側に禁止事項を書き込み、生成後に人が読むという二段構えを崩さないようにしています
院内チェックの型──量産できる時代こそ確認体制で差が開く
チェックの仕組みは、複雑にすると回りません
分厚いチェックリストを作っても、忙しい現場では形骸化するだけです
私たちは、公開前の確認を次のような型に絞って運用しています
- 最終確認は人が行う──AIの下書きを、内容を知る人が読んでから公開する
- 出典のない数字は消す──裏づけを示せない統計や実績値は使わない
- 断定と比較の言葉を探す──「必ず」「一番」「他院より」を機械的に検索して消す
- 書いた事実が院内に実在するか確かめる──設備・資格・診療内容の記載を照合する
確認する人は、文章の上手さではなく院内の事実を知っていることが条件です
診療内容なら院長が、受付や設備の記載なら事務長が読む、と担当を決めておくと確認が形式だけになりません
慣れてくれば、一本あたりの確認は下書きを読み返す数分の作業に収まっていきます
この型は一度決めてしまえば、記事が十本になっても百本になっても同じように回ります
発信物を量産できる時代に積み上がっていくのは、文章の本数だけではありません
一枚ずつ確認を通した発信の積み重ねは、患者さんと行政の双方に対する信頼の積み重ねになります
逆に、確認なしの量産は、問題のある表現を院の名前で量産することと同じです
ここが、守れている院とそうでない院の差が開いていく分かれ目だと私たちは考えています
ガイドラインの詳細や最新の解釈は、厚生労働省の公表資料で確認してください
規制を理解した内製は、外注よりも公開が遅いどころか、確認まで含めて院内で完結する体制になり得ます
内製そのものの進め方はホームページ内製の記事で、私たちの支援の全体像はこちらでご覧いただけます
よくある質問
- クリニックのホームページも医療広告ガイドラインの対象になりますか
- 条件によっては広告として扱われ、規制の対象になり得ます
掲載する内容ごとに扱いが異なるため、判断に迷う記載は厚生労働省の公表資料にあたって確認する運用をおすすめします - AIで作った文章を医療機関のホームページに使っても大丈夫ですか
- 使うこと自体が問題なのではなく、確認せずに公開することが問題だと私たちは考えています
下書きをAIに任せ、事実確認と表現の最終判断を人が行う分担であれば、内製の実務は十分に成り立ちます - 院内に医療広告をチェックできる人がいない場合はどうすればよいですか
- まず本記事の「断定・比較・出典のない数字を消す」という型だけでも院内で始めてみてください
体制づくりから支援が必要な場合は、私たちにご相談いただくこともできます


