整形外科クリニックのDX リハビリ案内をAIで内製
整形外科クリニックのDXは「伝える仕事」から変わる
整形外科クリニックのDXで最初に効果が出やすいのは、リハビリ指導資料や自宅での運動案内といった「伝える仕事」の内製です
整形外科は治療が一回で完結せず、通院とリハビリと自宅での運動が長く続く診療科です
だからこそ、診察室とリハビリ室で伝えたことが自宅でどれだけ再現されるかが、日々の診療の手応えを左右します
ところが現実には、口頭で伝えた運動は忘れられ、渡した紙は冷蔵庫に貼られないまま埋もれ、次の予約は「痛みが引いたから」と流れてしまいます
スタッフごとに説明が違えば患者は混乱し、高齢の患者には文字の小さい資料がそもそも読まれません
この「伝わらない」の積み重ねを、AIとDXで一つずつ潰していくのが整形外科の内製の考え方です
腰や膝の痛みは、受診の前にまず検索される症状でもあります
医療の世界は外から見ればブラックボックスで、外にある情報は玉石混交です
だからこそ、日々患者を診ている整形外科が自ら説明を発信することには価値があり、その積み重ねが「この先生の説明なら分かる」という信頼につながっていきます
私たちは同一グループの医療法人が開設するクリニックを実証の場としてAIの仕組みを開発し、実際の診療現場で運用しています
その経験から、整形外科で取り組みやすい領域を整理します
整形外科のDXで変えられる領域
結論から言えば、リハビリと通院の周辺にある伝達業務が主戦場になります
- リハビリ指導資料——部位別・時期別の運動をイラスト入りで資料化
- 自宅での運動案内——家でやる内容を忘れないための紙とLINEの二本立て
- 通院継続を支える連絡設計——予約前の連絡、来なくなった患者へのフォロー
- 高齢患者向けの資料づくり——大きな文字とやさしい言葉への書き換え
- スタッフ教育——物理療法の案内や声かけをマニュアルに型化
- 発信——腰や膝の悩みに関する情報をホームページで届ける
いずれも、外注すれば大きな費用がかかってきた領域か、スタッフの残業で賄われてきた領域です
医療機関の制作物や仕組みづくりが高くつくのは歴史的な常識でしたが、AIの登場でその常識は終わりつつあります
一方で、レントゲン画像などから骨折や疾患の可能性を判定する診断支援AIはプログラム医療機器の領域であり、私たちは扱いません
運動の処方や負荷の判断はあくまで医師と理学療法士のものであり、AIが担うのは「決めた内容を伝わる形にする」部分です
診療所のAI活用の全体像はクリニックのAI活用事例の記事でも紹介しています
整形外科ならではのAI活用例を深掘りする
活用例① リハビリ指導資料と自宅での運動案内の内製
理学療法士がリハビリ室でいつも説明している内容を、音声入力でそのまま吹き込みます
AIがそれを文章に整え、部位別・時期別の運動案内の下書きに仕上げる——喋るだけで文章になる時代なので、資料づくりのために机に向かう時間はほとんど要りません
イラストやレイアウトもAIで作れるため、外注していた制作が院内で完結します
ただしAIは時に嘘をつき、できるのに「できない」と言い、それらしい誤りも混ぜてきます
運動の内容や注意事項は必ず理学療法士と医師が最終確認する——この手順をセットにすることで、内製した資料を安心して配れるようになります
紙の資料と同じ内容をLINEでも受け取れるようにしておくと、家で紙をなくしても運動を確認できます
部位別・時期別に一度型を作れば、二つ目以降の資料は短時間で増やせます
「肩の資料もほしい」「術後版もほしい」と現場から声が上がり始めたら、内製は軌道に乗っています
活用例② 通院継続を支える連絡設計
リハビリは継続が前提とされる場面が多い一方、痛みが軽くなると足は遠のきがちです
次回予約の前日に連絡が届き、間隔が空いた方には様子うかがいが届く——そうした連絡の流れを、本人が希望して登録したLINEなどで設計しておくと、受付が一人ひとりに電話をかけなくても、通院の途切れに早く気づけるようになります
自宅での運動を思い出してもらう配信を組み合わせれば、通院と通院の間を埋める接点にもなります
設計の手順はLINEステップ配信の記事にまとめています
中断した患者への連絡は、責める文面ではなく「その後の調子はいかがですか」と様子を聞く形にします
売り込みの連絡は届かなくなるだけなので、自宅でできる運動の紹介など、役に立つ内容を主にするのが長続きのこつです
なお病状や通院状況の詳細はLINEに載せず、文面は一般的な表現に留めます
活用例③ 高齢の患者に伝わる資料づくり
同じ内容でも、文字の大きさ、言葉の選び方、図の入れ方で伝わり方は変わります
専門用語をやさしい言葉に書き換える、文章を短くする、家族向けの説明を添える——こうした書き換えはAIの得意分野です
一度「高齢の患者向けの書き換えの型」を作れば、以後の資料はすべて同じ型で変換できます
資料やマニュアルの作り方はスタッフ教育マニュアルの記事が参考になります
読まれない資料は、ないのと同じです
渡すときに「読めそうですか」と一言確認し、家族が同じ案内をスマートフォンで受け取れるようにしておくと、自宅での見守りにもつながります
整形外科のDXを段階的に始める手順
最初から全部わかっている人はいません
1、2、3、4と段階を踏むから「これもできる」が広がっていきます
- 第一段階——リハビリ室と診察室で繰り返している説明を書き出す
- 第二段階——最も多い部位の運動案内を一つ資料化し、専門職の確認を通して配り始める
- 第三段階——予約前連絡と中断フォローの連絡設計をつくる
- 第四段階——資料を高齢者向け・家族向けに展開し、スタッフのマニュアルへ広げる
各段階で「AIの出力を誰が最終確認するか」を決めてから次へ進みます
2026年6月の診療報酬改定では、体制の評価から活用実績の評価へ軸足が移るとされており、小さく始めて使い続けた記録を残す進め方は制度の面でも合理的です
業務効率化は入り口にすぎません
資料づくりと連絡がAIと仕組みに載った先で、徒手療法や運動の指導、患者との会話——人にしかできない仕事に時間を返せるようになります
私たちが診療現場でどんな業務を置き換えてきたかは医療機関向けAI導入支援のページで紹介しています
よくある質問
- 整形外科のリハビリ案内はAIでどこまで作れますか
- 説明の書き起こしから文章の整形、イラスト入り資料のレイアウトまでは院内で作れます
ただし運動の内容と注意事項の正しさは、必ず理学療法士と医師が最終確認する手順を残してください - 高齢の患者にLINEなどの連絡は受け入れられますか
- スマートフォンを日常的に使う高齢の方は増えており、家族が代わりに受け取る形もあります
紙の資料とデジタルの連絡を二本立てにして、患者ごとに合う方を選べるようにする設計を私たちはおすすめしています - リハビリの中身までAIに任せて大丈夫ですか
- 運動の処方や負荷の判断はAIに任せず、医師と理学療法士が決めるべき領域です
AIが担うのは、決めた内容を伝わる資料や連絡の形にする部分であり、診断や治療判断に踏み込むAIを私たちは扱いません


