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クリニックのAI活用事例 診療現場で動いている実例

公開日 2026年8月20日 執筆 RAKUKARADA LLC

クリニックのAI活用事例として自動集計の画面を確認する診療現場のスタッフ
診療現場で毎日動いている仕組みだけを紹介

実証の場としての診療現場——このAI活用事例の立ち位置

クリニックのAI活用事例と題した記事は世の中に多くありますが、その多くは製品カタログの言い換えです
この記事では、同一グループの医療法人が開設するクリニックを実証の場として私たちが開発し、実際の診療現場で日々動いているものだけを紹介します
特定の効果を保証する趣旨ではなく、「現場ではこう運用している」という事実ベースの共有です

すべてに共通する考え方は、「作業を速くする」ではなく「作業そのものをなくす」です
手作業を少し楽にするだけの改善は、担当者が代わると元に戻ります
作業自体が発生しない仕組みに変えると、後戻りが起きにくくなります

事務まわりのAI活用事例——同意書・予約集計・アウトカム調査の自動化

同意書の電子化と版管理

紙の同意書は、印刷・差し替え・保管のすべてが手作業でした
電子化にあたっては、単に紙を電子ファイルにするのではなく、「どの患者がどの版の同意書に同意したか」を追える版管理を仕組みに組み込みました
説明文言を見直したときに旧版と新版が混ざらないことが、現場では何より重要だからです
この仕組みで消えたのは、差し替え忘れを気にしながら紙を管理する作業そのものです

予約データの自動集計

予約システムからデータを取り出し、時間帯別・曜日別の集計表を自動で作る仕組みを動かしています
以前はスタッフが表計算ソフトへ転記していた作業で、集計のためだけに残る日もありました
いまは「集計する」という作業自体が業務表から消え、人が担うのは数字を見て判断する部分だけです
作り方の詳細は予約データの集計自動化の記事にまとめています

患者報告アウトカム調査を、ほぼ1人で回す

もう一歩進んだ例が、患者報告アウトカム——治療の経過を患者自身の回答で把握する調査——を院内で回す仕組みです
紙で配って回収し、手で集計し、統計処理を外部に頼むのが従来の形でしたが、私たちの現場では回答の収集から集計、統計処理、結果のWebサイトへの反映までを自動化しました
いまはほぼ1人の担当者が、短い実作業で調査の一連を回しています

回答は個人が特定されない形で集計され、人が担うのは設問の設計と結果の解釈です
調査の設計・同意の取り方・結果の公表は、医療機関としての手続きと確認を経て行うことが前提です
研究機関の設備がなければ難しいとされてきた領域も、仕組みを作り込めば日常業務の中に収まるというのが、運用してみての実感です
調査を続けること自体が診療を見直す習慣になる、というのが運用してみての実感です

患者コミュニケーションの事例——多言語資料・患者向けマニュアル・LINE案内

クリニックのAI活用で内製した患者向け資料をタブレットで案内する看護師のイラスト
資料もマニュアルも院内で形にする

患者向け資料の多言語内製

外国人の患者向けの案内資料は、以前は翻訳の外注が前提で、文言をひとつ直すたびに依頼と納品待ちが発生していました
現在はAIで多言語の下書きを院内で作り、内容の最終確認だけを人が行う流れです
外注の往復を待つ時間がなくなったことで、資料を直すこと自体の心理的なハードルが下がりました

患者向けマニュアルは10〜15分で形になる

検査前の注意点や器具の使い方といった患者向けマニュアルも、内製に切り替えました
伝えたい情報を箇条書きで先にAIへ渡せば、構成の整った下書きが10〜15分ほどで形になります
ゼロから清書する重さが消えたことで、「あったほうがよいのに後回しになっていた資料」が実際に作られるようになりました
話した内容を音声入力からAIに整えさせる形なら、文章を書くのが得意でないスタッフでも作り手になれます

LINEでの案内自動化

予約前後の案内や持ち物の連絡など、毎回同じ内容を電話や口頭で伝えていたものをLINEでの自動配信に載せ替えました
問い合わせの電話が鳴ってから対応するのではなく、問い合わせが生まれる前に情報が届いている状態を目指した設計です
配信の文面はAIで下書きし、内容の確認と配信の判断は人が行う分担にしています
自動化するのは案内の「配達」であって、患者への説明責任そのものではない、という線引きです

情報発信のAI活用事例——告知ページの内製と自費診療サイトの比較運用

医療機関のホームページは、更新が止まりやすい場所です
外注すると往復に時間がかかり、院内で書こうとすると診療後の余力に頼ることになるからです
私たちの現場では、新しい診療の告知ページを外注していた頃は、打ち合わせを重ねて公開まで1か月ほどかかるのが通例でした
内製に切り替えたいまは、内容が固まったその日のうちにページを出せています
速さそのものより、「思い立った日に出せる」ことが発信の量と鮮度を変えました

内製ならではの贅沢もあります
自費診療の紹介サイトを1本だけ作って反応を祈るのではなく、切り口を変えた2〜3本を同時に公開し、閲覧や問い合わせの数字を見て、反応の良かった1本に寄せていくやり方です
外注が前提ならためらう物量ですが、内製なら試す回数を増やすこと自体にほとんど追加の手間がかかりません
数字で選ぶので、院内の好みで議論が空転することもなくなります

いずれも、AIが担うのは下書きまでで、医療広告ガイドラインの確認と公開の判断は人が行います
ホームページを院内で回す体制のつくり方は、クリニックのホームページ内製の記事で詳しく解説しています

実例なくなった作業
同意書の電子化と版管理紙の印刷・差し替え・版の突き合わせ
予約データの自動集計表計算ソフトへの転記と手集計
アウトカム調査の自動化手集計・統計処理・Web反映の手作業
患者向け資料の多言語内製翻訳外注の依頼と納品待ちの往復
患者向けマニュアルの内製ゼロからの清書と後回し
告知ページ・自費診療サイトの内製外注の打ち合わせと納品待ち
LINEでの案内自動化同じ説明を繰り返す電話・口頭対応

表にして並べると、どれも「なくなった作業」の欄が具体的に書けることが分かります
ここが書けない導入は、道具が増えただけで仕事が減っていない可能性が高いです
事例を検討するときは、機能の一覧よりも、この欄が埋まるかどうかを見ることをおすすめします

これらは大規模な投資から一気に生まれたものではなく、業務の棚卸しと仕分けから順番に積み上げたものです
どこから手をつけるかの考え方は医療機関のAI導入はどこから始めるかの記事に、私たちの支援の全体像は医療機関向けAI導入支援のページにまとめています

よくある質問

小規模なクリニックでも同じAI活用はできますか
紹介した実例は、いずれも一つのクリニックの現場から始まったものです
全部を一度にやる必要はなく、自院の手作業のうち繰り返しの多いものから一つ選んで置き換えるのが現実的です
患者の情報をAIに入れても大丈夫ですか
私たちは、患者の実データを外部のAIサービスへそのまま渡さない設計を前提にしています
下書き生成や翻訳は個人情報を含まない形で行い、個人情報を扱う部分は仕組みと運用ルールの両面で分離します
この設計自体が導入支援の重要な部分だと考えています
診断を補助するAIの導入も頼めますか
診断・スクリーニング・診断補助の領域は医療機器の規制に関わるため、私たちは扱いません
この記事の実例を含め、支援の範囲は事務・制作・案内といった業務効率化に限定しています

この記事に関係するもの

桜岡 寿英
桜岡 寿英|RAKUKARADA LLC 代表社員

都内で医療法人の代表をしながら、医療機関のAI導入・内製化を支援しています 同一グループの診療現場を実証の場として、実際に動く仕組みを開発・運用しています

この記事の書き方は 編集方針 に沿っています

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