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循環器内科クリニックの経営とDX 継続通院を支える

公開日 2026年8月20日 執筆 RAKUKARADA LLC

循環器内科クリニックで生活指導を説明する医師と患者
診察室の説明を支える資料づくり

循環器内科クリニックの経営は「通院が続くか」で決まる

循環器内科クリニックの経営を考えるとき、私たちが最も重要だと考えるのは新患の獲得ではなく、いま通っている患者さんの通院が続くことです
高血圧・心不全・不整脈といった慢性疾患は、症状が落ち着いて見える時期に自己判断で通院が途切れやすい、と言われ続けてきた領域です
つまり継続通院を支える仕組みは、経営の数字にも診療の継続性にも関わる、循環器ならではの投資先です

ところが継続を支える仕事——次回受診の案内、生活指導、途切れた方への声かけ——は、診察室の外側にあり、忙しい現場では後回しになりがちです
電話での声かけは受付の繁忙に左右され、生活指導は診察時間の制約の中で口頭の説明に頼りがちです
循環器のDXが真価を発揮するのは、まさにこの領域だと私たちは考えています

先にお断りしておくと、心電図の自動解析のような診断・診断補助のAIは医療機器の規制に関わるため、私たちは扱いません
線引きの考え方はSaMDとの線引きの記事に書いたとおりで、この記事で扱うのはすべて診断の外側、業務と案内の話です

循環器のDXで変えられるのは診断の外側の仕事

診療現場でAIとDXが力を発揮するのは、次のような場面です

それぞれで何が変わるかを並べると、次のようになります

領域これまで仕組み化した後
再診案内台帳を見ながら一人ずつ電話目安時期に自動で案内が届く
生活指導診察内の口頭説明に依存資料が診察の外でも患者さんを支える
データ集計表計算ソフトへの転記と手集計集計は自動、人は判断に集中
スタッフ教育口伝えの引き継ぎ手順書が新人を支える

これからなくなっていくのは、統計処理や資料づくりのような「頭がいい」とされてきた領域の作業です
残るのは問診・診察・患者さんとの会話——人にしかできない仕事に、先生の時間を寄せていくのがDXの本来の目的です

循環器ならではの活用例を深掘りする

循環器の継続通院を支える案内を受け取り散歩する高齢夫婦のイラスト
生活指導が診察室の外でも続く状態へ

継続通院を支える案内の自動化

本人が希望して登録した方には、次回受診の目安時期に合わせた一般的な案内をLINEで自動で届けられます
「そろそろ受診の時期です」という短い連絡が、受診のきっかけを思い出させてくれます
電話での声かけは繁忙期に必ず止まりますが、仕組みに載せた案内は止まりません
さらに、再診の目安を過ぎた方の一覧が自動で手元に出るだけでも、「気づいたら半年来ていなかった」という中断に医院側が先に気づけるようになります
なお病名や検査結果のような患者情報はLINEの文面にも配信の仕組みにも載せず、個別性の高い連絡は電話など院内の手段で行う——この線引きが大前提です
配信の設計はクリニックのLINEステップ配信の記事にまとめています

大切なのは、案内を「督促」にしないことです
季節の血圧の話題や受診の目安のような役に立つ情報に添えて届けると、患者さんにとって通知が負担になりにくいと私たちは感じています
冬場の血圧の変化、夏の脱水と心臓への負担——循環器には季節ごとに伝えたいことがあり、配信の題材には困りません

生活指導資料を院内で作る

減塩の工夫、運動の始め方、服薬を続ける意味、ホルター心電図や心エコーといった検査の受け方——先生とスタッフが毎日繰り返している説明は、資料にする価値の高い知識です
医療の世界は外から見ればブラックボックスであり、正確で分かりやすい説明を求めている患者さんはたくさんいます
診察でいつも喋っている内容を音声入力で文字にし、AIに整形させれば、書くのが苦手でも資料は作れます
喋るだけで文章になる時代です
一度資料になれば、診察室で手渡すだけでなく、待合室に置く、LINEで受診後に届ける、ご家族に共有してもらうと、説明の届く範囲が広がります
食事を作るご家族に減塩の資料が届くかどうかで、指導の定着は変わってきます

ただしAIは時に、事実と違う内容を自然な文章で書きます
できるはずのことを「できない」と答えることさえあります
その特性を理解して指示を作り込み、医学的な内容の最終確認は必ず先生が行う——この分担が運用の前提です

データ集計で診療の傾向を見る

予約・来院のデータを時間帯別・曜日別・再診間隔別に集計すると、自院の診療の傾向が見えてきます
再診の間隔が空きはじめた患者さんの層が分かれば、案内の設計に反映できます
時間帯別の集計からは検査枠の偏りが、曜日別の集計からは混雑の波が見え、予約枠の組み方を考える材料になります
以前は表計算ソフトへの転記と手作業の集計が必要だった仕事ですが、いまは集計そのものを自動化し、人は数字を見て判断する部分だけを担えます
同じ発想で動いている実例はクリニックのAI活用事例の記事で紹介しています

注意したいのは、集計の結果を診断や治療方針の判断に直結させないことです
数字が示すのはあくまで来院の傾向であり、そこからどう動くかを決めるのは先生です
AIと仕組みが出すのは判断の材料まで——この線引きは、資料づくりでも集計でも変わりません

循環器内科のDXを段階的に始める

最初から全体像が見えている必要はありません
1、2、3と一つずつ動かすうちに「これもできる」が広がっていくのが、私たちの現場で起きたことです

  1. 再診案内・生活指導・集計のうち、手作業が最も重いものを一つ選ぶ
  2. 生活指導資料を一枚、音声入力とAIの下書きで作ってみる
  3. LINEでの再診案内を一つの疾患・一つの文面から始める
  4. 予約データの自動集計へ広げ、数字で案内を改善する

並行して、作った資料や配信の運用手順をスタッフ向けの手順書に残しておくと、担当者が代わっても仕組みが止まりません
仕組みは作ることより、続くように設計することの方が難しいからです

業務効率化は入り口にすぎません
「こんなこともできるのか」の先で、診療の組み立てや先生自身の時間の使い方が変わっていきます
私たちの支援の全体像は医療機関向けAI導入支援のページをご覧ください

よくある質問

循環器内科で診断以外にAIを使う意味はありますか
あると考えています
慢性疾患の診療では、通院の継続と生活指導の定着が結果を左右し、その両方は案内・資料・集計という診断の外側の仕組みで支えられるからです
診断領域のAIは医療機器の規制に関わるため、私たちは扱いません
生活指導の資料をAIで作っても問題ありませんか
下書きをAIが作り、医学的な内容の最終確認を医師が行う分担であれば、実務的な方法だと考えています
AIは誤った内容を自然に書くことがあるため、確認なしでそのまま配布する運用はおすすめしません
クリニックのデータ集計は何から始めればいいですか
予約・来院データの時間帯別・曜日別の集計からをおすすめします
すでにあるデータだけで始められ、スタッフの手集計という作業をなくしながら、診療の傾向という判断材料が手に入るからです

この記事に関係するもの

桜岡 寿英
桜岡 寿英|RAKUKARADA LLC 代表社員

都内で医療法人の代表をしながら、医療機関のAI導入・内製化を支援しています 同一グループの診療現場を実証の場として、実際に動く仕組みを開発・運用しています

この記事の書き方は 編集方針 に沿っています

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